「ジョジョに満点出したファミ通なんて信用できない」説を徹底検証
――時オカリメイク37/40は、本当に“眉唾”なのか?
本日2026年11月5日、Nintendo Switch 2『ゼルダの伝説 時のオカリナ』リメイクが発売された。週刊ファミ通のクロスレビューは37/40点(10・9・9・9)。ところがSNSでは、こんな声が上がっている。
「ファミ通はかつて伝説のクソゲー“ジョジョASB”に満点40点を出した媒体。あの37点も眉唾では?」
気持ちは分かる。だが、この説はどこまで正しいのか。「ジョジョ満点事件」の事実関係から、ファミ通側の公式見解、満点タイトルの歴史、そして今回の37点と他メディア評価の比較まで、順番に検証していく。
■ 結論:事件は実在する。でも「だから今回の37点も眉唾」は短絡的。
- 『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』が40/40満点を取ったのは事実。発売後の大炎上と価格崩壊も事実。
- ただし炎上の最大要因だった「キャンペーンモードのスタミナ課金」は、公式発表が発売前日で、レビュー掲載はその1週間前。発売前レビューでは検証のしようがなかったという構造的事情がある。
- 今回のリメイクは、海外レビュー集積Metacriticで96点という高評価。37/40を100点換算すると92.5点で、ファミ通はむしろ海外平均より“辛め”に出ている。
- クロスレビューには構造的な注意点(後述)があるのは確かだが、判断材料にすべきは点数ではなく短評の減点理由と、他メディアの中央値だ。
1. 「ジョジョ満点事件」の事実関係
まず事件そのものを確定させる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品 | 『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』(PS3、バンダイナムコゲームス、開発:サイバーコネクトツー) |
| 発売日 | 2013年8月29日(定価7,980円) |
| レビュー掲載 | 週刊ファミ通2013年9月5日号(8月22日発売)クロスレビュー |
| 得点 | 40点(10/10/10/10)、プラチナ殿堂入り。クロスレビュー史上23本目の満点 |
| レビューの論調 | 4人ともキャラクターの再現度、モーションの作り込みを絶賛。総評では「最高のキャラゲーと言える完成度」とまで評された |
| 初動 | メーカー受注50万本突破、初週売上は約40万本とPS3タイトル屈指の好スタート |
開発元のサイバーコネクトツー・松山洋社長は当時、Twitterで感謝の連続投稿をし、「ありがとう。それしか、言葉が見つからない」と原作のセリフで締めている。つまり満点は、メーカー側にとっても本気で予想外の“快挙”として受け止められていた。
なお、歴代ジョジョゲーのファミ通点は、PS『ジョジョの奇妙な冒険』(1999年)が31点、PS2『黄金の旋風』(2002年)が31点。ASBの40点はシリーズぶっちぎりの最高得点だった。
2. なぜ「伝説のクソゲー」と呼ばれるようになったか
発売直後、評価は真逆に振れた。主な問題点は以下の通りだ。
(1)発売前日に明かされた「キャンペーンモード」の課金仕様
本作の目玉モードの一つ「キャンペーンモード」は、プレイに「エネルギー(スタミナ)」を消費し、1回復に20分かかる――回復アイテムは有料課金。いわゆるソーシャルゲームの仕組みを、定価7,980円のフルプライスソフトに持ち込んだ形だった。しかもこの仕様の詳細が公式サイトで公表されたのは発売の前日。ゲームライターの田下広夢氏は「課金をしないと快適に遊べないコンテンツが存在することを発売前に告知しなかった」ことが、ユーザーに「裏切られた」「騙された」という印象を与えたと分析している。
(2)格闘ゲームとしての粗さ
発売直後から「全キャラクターに永久コンボ(永久パターン)が存在する」と指摘され、対戦バランスは崩壊状態だった。描画は原作再現のため意図的に30fpsに抑えられており、ロード時間の長さ、オンライン対戦のラグの酷さも購入者レビューで繰り返し挙げられている。ストーリーモードも約2時間と薄く、「紙芝居」と評された。
(3)記録的な価格崩壊
2週目の売上は2万本を割り込み、価格は暴落。発売2週間で店頭価格は半額の約4,000円、発売1か月後のAmazon.co.jpでは新品が2,590円(定価の約3割)に。発売から約3週間で「買取不可タイトル」に指定する店舗まで現れた。価格下落の速さは、作中のキャラクター名を取ってネット上で「スピードワゴン(行き)」とまで呼ばれた。
メーカー側は発売後、エネルギーの回復速度を4倍にし、配信中だったDLCキャラクターの1体を無料化、もう1体を半額にするなどの対応を取ったが、一度失われた信頼は戻らなかった。
3. 「提灯レビュー(広告忖度)」疑惑を検証する
では、満点は“提灯”だったのか。疑惑の根拠として語られる点と、公式見解を分けて整理する。先に断っておくと、点数と広告・特集の間に金銭的な見返りがあったという証拠は、現在まで一切確認されていない。以下は「疑惑が語られる構造」の検証である。
疑惑側の根拠として語られること
- 4人のレビュー文は再現度への絶賛が中心で、のちに大問題になった要素への言及がなかった。
- ファミ通はゲームメーカーの広告で成り立つ媒体であり、メーカー協力で誌面を作る構造上「大手に甘いのではないか」という指摘は昔からある。ゲーム作家のさくまあきら氏は、誌名は伏せつつ「広告の入稿量で評価が左右されているらしい」と著書で仄めかしたことがある(ファミ通Wikipediaに記録あり)。
- カタログ系ファンwikiなどでは今も「疑わしきファミ通の40点」と明記されている。
構造的な“言い訳”も存在する
- 最大の問題だったキャンペーンモードの課金詳細は、公式発表自体が発売前日。レビューが載った号の発売は8月22日で、その時点でレビュアーが課金仕様を知る手段はほぼなかった。オンライン前提のモードは、発売前の環境では十分に検証できない。
- 永久コンボのような対戦バランスの問題は、多数のプレイヤーが長時間遊んで初めて発見される性質のもので、締切のある発売前レビューで検出するのは一般に難しい。
- ニコニコ大百科などでも「広告の問題というより、週に何本もレビューする時間不足が本質では」という指摘がある。
ファミ通側・メーカー側の公式見解
- 週刊ファミ通の現編集長・嵯峨寛子氏は、創刊40周年にあわせたインタビュー(文春オンライン/Bloomberg)で、「点数が1点いくらで買える」という噂について「そんなことは絶対にない」と否定。プロモーション面の支援や取材費負担を受けることはあっても、相手に指示された内容を書くことはないと説明している。
- サイバーコネクトツーの松山洋社長も2020年、自身のnoteで「点数を買える」類の話についてそのような事実は一切ないと否定している。
総合すると、「提灯だった」と断定する材料はない。一方で、「発売前レビューは、オンライン要素・課金要素・対戦バランスを構造的に評価しきれない」という教訓は、この事件が残した本物の論点だと言える。
4. クロスレビューの仕組みと「満点インフレ」の歴史
そもそもクロスレビューの点数はどう付けられているのか。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 採点方式 | レビュアー4人が各10点満点、合計40点満点(1986年開始) |
| 配点の目安 | 「一定の水準に達した標準的な完成度」が基準点7点とされる |
| 殿堂入り | 30〜31点=シルバー殿堂/32〜34点=ゴールド殿堂/35〜40点=プラチナ殿堂 |
ここで今回の記事最大のフックを確認しておきたい。クロスレビュー史上初の40点満点を獲得した作品は、1998年のN64版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』、つまり今回リメイクされた原作そのものである(当時、他誌からは「異常に甘い採点では」と疑問視する声もあったという)。
満点タイトルの推移(機種別カウントを含む一覧ベース)
| 時期 | 満点の本数 | 代表作 |
|---|---|---|
| 1998〜2005年 | 5本 | 時のオカリナ、ソウルキャリバー、ベイグラントストーリー、風のタクト、nintendogs |
| 2006〜2010年 | 10本 | FF XII、スマブラX、MGS4、428、ドラクエIX、モンハン3、BAYONETTA ほか |
| 2011〜2013年 | 10本 | スカイウォードソード、Skyrim、パルテナの鏡、龍が如く5、ジョジョASB、GTA V ほか |
| 2014〜2024年 | 9本 | MGS V、ブレス オブ ザ ワイルド、ドラクエXI、DEATH STRANDING、ティアーズ オブ ザ キングダム、ストリートファイター6、龍が如く8 ほか |
累計は34本(週刊ファミ通2026年6月18日号・創刊40周年記念号のカタログに基づく一覧より)。確かに2000年代後半〜2013年頃に満点が急増し、「インフレだ」という批判が出たのは数字の上でも裏付けられる。ASBはそのピーク期の23本目だった。他方、2014年以降はペースが落ち着いていることも読み取れる。
5. 今回の37/40の中身と、他メディアとの比較
では今回の点数はどうなのか。内訳は10・9・9・9。二次報道で確認できる短評の要旨は次の通りだ。
指摘された点:現代の作品と比べると比較的シンプルな作りで、「次に何をすべきか分からなくなる場面がある」。
注目したいのは、ファミ通が「無条件の絶賛」をしていないことだ。減点理由が具体的に書かれている。そして比較対象が揃っている。
| 媒体・指標 | 時オカリメイクへの評価 |
|---|---|
| ファミ通 クロスレビュー | 37/40(10・9・9・9)=100点換算で92.5点 |
| Metacritic(海外レビュー集積) | メタスコア96(発売時点でSwitch 2向け最高水準と報じられた) |
| GamesRadar+ | 「これまでで最大級・大胆なリメイク」と絶賛するレビュー |
| 参考:N64原作(1998年) | ファミ通40/40(史上初)、Metacritic 99(同サイト史上最高) |
| 参考:3DS版リメイク(2011年) | ファミ通37/40(今回と同点) |
判定は明確だ。今回の37点は、他メディアと比べて突出して甘いどころか、むしろ控えめな部類である。さらに言えば、2011年の3DS版リメイクにも同じ37点を付けており、「原作が初満点だから身内びいきで甘くした」という構図にもなっていない。ASBのときのような「発売後にしか分からない隠れた課金要素」も、本作のようなフルプライスのシングルプレイ完結型リメイクには存在しない。
6. 結論:ファミ通の点数は、こう使えばいい
検証をまとめると、「ジョジョ満点事件」は実在し、クロスレビューの構造的な弱点(発売前レビューではオンライン・課金・バランスを検証しきれない/基準点7点スタートで高得点帯に密集しやすい/あくまで4人の主観の合計)を教えてくれる事件だった。そこから学ぶべきなのは「ファミ通の点は全部ウソ」という短絡ではなく、次のような読み方だ。
- 点数ではなく、短評の「減点理由」を読む。今回なら「現代作と比べるとシンプル」「次にやることが分かりにくい場面がある」が、買うかどうかを分ける実質的な情報。
- 他メディアの中央値と並べる。ファミ通37/40(換算92.5)に対しメタスコア96。大きく乖離していない=点の“相場”は妥当、と判断できる。
- ジャンルで「発売前レビューが苦手な領域」を見分ける。オンライン対戦・ライブサービス型課金・長期やり込み要素が核のゲームでは、発売前レビューの点は割り引いて考える。逆に、内容が既知のリメイクやシングルプレイ完結型では、レビューの射程と実物がずれにくい。
- 「事件の教訓」と「今回の評価」を混同しない。ASBで失われたのは“発売前に検証不能な要素を抱えたゲーム”への信頼であって、すべての高得点への信頼ではない。
というわけで、時オカリメイクの37/40は「眉唾」どころか、海外評価と並べても筋の通った点数だった。むしろ今回の主役は、「史上初の満点から28年、そのリメイクが満点に3点届かなかった」という数字の物語そのものかもしれない。
関連アイテムで“事件”と“名作”を遊び比べる
ゼルダの伝説 時のオカリナ -Switch2(パッケージ版)
本記事の主役。定価8,980円(税込)。史上初のファミ通満点を取った原作のフルリメイクで、グラフィック・カメラ・操作性を現代仕様に作り直した一本。ファミ通37/40、メタスコア96という数字が本当かどうかは、自分の手で確かめるのが一番早い。
※リンク・価格情報は2026年11月5日確認時点のものです。
ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル R -Switch
2013年の“事件の当事者”のリマスター版(2022年発売、定価7,678円)。2013年のPS3版とは別物で、問題になったキャンペーンモード(スタミナ課金)は廃止され、新モード「オールスターバトル」に一新。対戦テンポの調整やヒットストップ・ジャンプダッシュの追加で格闘ゲームとして作り直され、総勢50キャラが参戦する。ファミ通の満点が「再現度」への評価だったことは、この現行版を触るとよく分かる。炎上を経てどう直されたか、遊び比べると記事の内容が立体的に分かる。
※リンクは2026年11月5日確認時点のものです。セール対象になることも多いため、価格はリンク先で確認してください。
ジョジョの奇妙な冒険 全63巻完結セット(ジャンプ・コミックス)
ASBが「再現度」で満点を取れた理由は、原作の圧倒的な作り込みにある。その原作、第1部ファントムブラッドから第6部ストーンオーシャンまでの全63巻を一気に揃える完結セット。承太郎、DIO、仗助、徐倫――ゲームに参戦した面々の「元ネタ」を原作で追うと、ASBの短評が絶賛したポイントがそのまま腑に落ちる。3万円前後の“大人買い”セットなので、まず第3部だけ……と言わず一括でいく人向け。
※リンクは2026年11月5日確認時点のものです。セット商品のため、価格・在庫は出品状況により変動します。リンク先で最新価格を確認してください。
出典
- 週刊ファミ通2013年9月5日号クロスレビュー(ASB 40点)/@JOJO「『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』がファミ通クロスレビューで40点満点を獲得!」
- Wikipedia「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」(評価・売上・価格推移/All About 田下広夢氏の分析、ウリドキの買取価格暴落分析を引用)
- All About ゲーム業界ニュース「ジョジョASB ファンの気持ちを裏切った結果」(2013年9月)
- ガジェット通信「10年目を迎えた『クソゲーオブザイヤー』(KOTY) 2013年の栄えある大賞に輝いたのは?」
- ライブドアニュース「ファミ通満点からの大暴落?意外と知らない『ジョジョASB』大炎上の真相」(2026年)
- 文春オンライン『ファミ通』編集長インタビュー(嵯峨寛子氏、点数買収説への否定)/gamestalk(Bloombergインタビュー要旨)
- Wikipedia「ファミ通」(クロスレビューの仕組み・殿堂入り基準・さくまあきら氏の仄めかし等)
- ファミ通クロスレビュー「満点」ソフト一覧(週刊ファミ通2026年6月18日号・創刊40周年記念号カタログに基づく)
- Notebookcheck/Twisted Voxel/GamesRadar(時オカリメイクのファミ通37/40=10・9・9・9と短評要旨、3DS版も37/40)
- 電ファミニコゲーマー「『時のオカリナ』リメイクが海外レビューでメタスコア平均96/100を獲得」(2026年11月4日)
※本記事は公開情報をもとにした検証記事です。「提灯レビュー」疑惑については、ファミ通編集長および関係者が公式に否定している見解を併記しており、本記事として疑惑を事実と断定するものではありません。点数・価格等の数値は出典時点のものです。