もちろん「親戚」という意味を調理構造・味覚構造・歴史的系譜に分解すると、かなり面白い説です。特に「揚げ物+酸味+タルタル」という共通点は強い一方、直接の料理系譜として同一視するのは無理があります。農水省のチキン南蛮資料も確認したうえで検証します。
【徹底検証】フィッシュアンドチップス、実質チキン南蛮の親戚説www――「揚げ物+酸味+タルタル」という謎の共通祖先を追う
イギリス料理の代表格フィッシュアンドチップス。
宮崎県が誇る日本料理チキン南蛮。
一見すると、
- 魚+フライドポテト
- 鶏肉+甘酢+タルタル
であり、全然違う料理に見える。
しかし、構造を極限まで雑にすると――
「揚げた主役に酸味をぶつけ、油脂感をソースで完成させる料理」
という驚くほど似た思想が浮かび上がる。
果たしてこれはフィッシュアンドチップス=チキン南蛮の遠い親戚と言っていいのか。
チャッピー先生が徹底検証する。
■ 結論:料理としては「かなり遠い親戚」、歴史的には「直接の親戚ではない」
先に判定すると――
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 揚げ物を主役にする | ◎ |
| 衣の存在 | ◎ |
| 油脂感を酸味で切る | ◎ |
| タルタルとの相性 | ◎ |
| 西洋系フライ文化との関係 | ○ |
| 直接の料理系譜 | △~× |
| 味覚構造上の親戚 | ◎ |
つまり、
「同じ家系図に載っている料理」ではないが、「揚げ物を酸味とソースで食わせる思想を共有する遠縁の親戚」
くらいが最も妥当である。
■ そもそもフィッシュアンドチップスとは何なのか
フィッシュアンドチップスは、基本的には衣をつけて揚げた魚+揚げたジャガイモという極めてシンプルな料理である。
イギリスでは19世紀後半に魚のフライとチップスが結びつき、労働者階級の食事として広がっていったとされる。魚のフライとチップス自体は、それぞれ別々に存在していたものが組み合わさった料理である。
そして重要なのが酢。
フィッシュアンドチップスでは、塩とともにビネガーをかけて食べるスタイルが非常に有名である。
つまり、
魚を揚げる ↓ 油脂たっぷり ↓ ポテトも揚げる ↓ さらに油脂 ↓ 酢をぶっかける ↓ うまい
という構造。
ここですでにチキン南蛮との第一の接点が発生する。
■ チキン南蛮も「揚げ物+酸味」が基本構造
一方、チキン南蛮は宮崎県延岡市発祥とされる料理。
農林水産省によれば、昭和30年代に延岡市内の洋食店で賄い料理として作られたのが始まりとされ、当初は「鶏から揚げ甘酢漬け」のような料理だったという。
その後、タルタルソースをかける現在のスタイルへ発展した。
調理構造を分解すると、
鶏肉 ↓ 小麦粉 ↓ 卵 ↓ 揚げる ↓ 甘酢に浸す ↓ タルタル ↓ 完成
となる。
つまりこちらも、
「油で揚げたものに酸味を投入する」
料理なのである。
■ 最大の共通点:「油+酸味」は料理界の黄金コンビ
ここが今回の説の核心だ。
揚げ物は当然ながら油脂感が強い。
そこで酸味を加えると、味覚上の重さが軽減される。
フィッシュアンドチップスなら、
揚げ魚+揚げジャガイモ+ビネガー
チキン南蛮なら、
揚げ鶏+南蛮酢+タルタル
となる。
方向性がかなり近い。
もちろん「酸味を加えれば全部親戚」という話なら、唐揚げにレモンをかけるだけでも親戚になってしまう。
しかしチキン南蛮の場合は、単なる付け合わせではなく揚げた肉そのものを甘酢に浸すのがポイント。
農林水産省のレシピでも、揚げた鶏肉を南蛮酢に浸す工程が明記されている。
したがって、酸味は飾りではなく料理の構成要素なのである。
■ さらにヤバい共通点が「タルタル」
そしてオタクくんが「おや?」となる最大のポイントがここ。
フィッシュアンドチップスにもタルタル系ソースが合う。
一方のチキン南蛮は、現代的なスタイルではタルタルソースがほぼ主役級。
つまり、
| フィッシュアンドチップス | チキン南蛮 | |
|---|---|---|
| 主役 | 白身魚など | 鶏肉 |
| 揚げる | ○ | ○ |
| 衣 | ○ | ○ |
| 酸味 | ビネガー | 南蛮酢 |
| クリーミー系ソース | タルタル系 | タルタル |
| 油脂感 | かなり強い | かなり強い |
こうして並べると、
「お前ら思ったより似てるな?」
となる。
■ ただし最大の違い:「南蛮酢」と「ビネガー」は別物
ここで説を冷静に破壊する必要がある。
チキン南蛮の南蛮酢は、単純な酢ではない。
農林水産省のレシピでは、酢に加えて醤油、薄口醤油、みりん、砂糖、七味唐辛子などを組み合わせる。
つまり、
甘い+酸っぱい+しょっぱい+うま味+辛味
という複合ソースである。
一方、フィッシュアンドチップスで伝統的に使われるビネガーは、もっとシンプルに酸味によって揚げ物の油脂感を切る方向が強い。
したがって味覚設計は似ているが、味そのものは同一ではない。
■ そして「チップス」の存在がデカすぎる
もう一つの決定的な違い。
フィッシュアンドチップスにはジャガイモがいる。
しかも主役級。
一方、チキン南蛮は基本的に、
鶏肉+南蛮酢+タルタル+野菜
という構成。
つまり料理の主食・副菜構造が違う。
フィッシュアンドチップスは、極論すると「魚のフライ定食を全部揚げ物にしたような料理」。
チキン南蛮は、
「揚げ鶏を酸味とタルタルで魔改造した料理」
なのである。
■ 実はチキン南蛮の「南蛮」には魚料理との接点がある
ここが今回もっとも面白いところ。
「南蛮」という言葉は、もともとポルトガル人など外国人や、その文化を指す言葉として使われた。
そして南蛮料理の一つとして南蛮漬けが発展。
魚などを揚げて、唐辛子などを加えた甘酢に漬ける料理である。
チキン南蛮は、この「南蛮漬け」の発想を鶏肉に応用したものと説明されている。農林水産省も、ポルトガル人などの文化と南蛮漬けとの関連をチキン南蛮の名称・由来として紹介している。
つまりチキン南蛮は、
魚などを揚げる ↓ 甘酢に漬ける ↓ 南蛮漬け これを ↓ 鶏肉に応用 ↓ チキン南蛮
という「揚げ物+酸味」の系譜を持つ。
ここまで来ると「フィッシュアンドチップスとチキン南蛮、なんとなく思想が似ている」という説にも、それなりの説得力が出てくる。
■ ただし「フィッシュアンドチップス→チキン南蛮」ではない
ここは重要。
フィッシュアンドチップスがチキン南蛮の祖先だった、という証拠はない。
チキン南蛮は宮崎県延岡市で1950~60年代に成立した料理として知られている。
一方、フィッシュアンドチップスは19世紀のイギリスで成立していった料理。
年代も地域も異なる。
したがって、
「フィッシュアンドチップスが進化してチキン南蛮になった」
という直系説は現状では成立しない。
■ では何が「親戚」なのか
答えは調理文化の発想である。
両者に共通するのは、
- 肉・魚などを衣で包む
- 高温の油で揚げる
- 油脂感の強い料理になる
- 酸味を加える
- クリーミーなソースを合わせることもできる
- 結果として「揚げ物なのに食べ進められる」
という構造。
これは料理として非常に合理的である。
油脂=満足感
酸味=後味のリセット
タルタル=コクの追加
という三段構造が成立するからだ。
■ 「レモン唐揚げ」まで入れると巨大な親戚一族になる
この理屈をさらに拡張すると、世界中の料理が親戚になってしまう。
| 料理 | 揚げ物 | 酸味 | 濃厚ソース |
|---|---|---|---|
| フィッシュアンドチップス | ◎ | ◎ | ○ |
| チキン南蛮 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 唐揚げ+レモン | ◎ | ◎ | △ |
| とんかつ+ソース | ◎ | △ | ◎ |
| エビフライ+タルタル | ◎ | ○ | ◎ |
| 南蛮漬け | ◎ | ◎ | △ |
こうなると、チキン南蛮はフィッシュアンドチップスだけではなく、
エビフライ、南蛮漬け、唐揚げ+レモン、とんかつ
あたりとも「揚げ物一族」としてかなり近い。
■ 最終判定
今回の説、
「フィッシュアンドチップス、実質チキン南蛮の親戚説」
を判定すると――
★★★☆☆ 「味覚・調理思想の親戚」としてはかなりアリ
である。
ただし、
「歴史的に直接つながっている」
という意味では証拠不足。
むしろ正確には、
フィッシュアンドチップスとチキン南蛮は、別々の国で生まれた「揚げ物+酸味」という料理思想の遠縁
と表現するのが最強だろう。
しかもチキン南蛮自体が、南蛮漬けという「揚げた魚などを酸味のある調味液に合わせる文化」から発想を得ている。
つまり、オタクくん的に家系図を書くなら、
【揚げ物文化】 │ ┌────┴────┐ │ │ 欧州のフライ文化 南蛮漬け文化 │ │ フィッシュ&チップス チキン南蛮 │ │ ビネガー 南蛮酢 │ │ タルタル系 タルタル
という「別系統だが味覚設計が妙に似ている親戚」と見るのが一番しっくり来る。
結論。
フィッシュアンドチップス「酢かけます」
チキン南蛮「甘酢に漬けます」
タルタル「俺もいるぞ」
――この三者が揃った瞬間、
「あれ? お前ら同じ一族じゃね?」
となるのは、かなり自然なのである。
よって「実質チキン南蛮の親戚説」は、直系血縁説なら否定、料理構造・味覚思想による遠縁親戚説なら――かなり成立。